鼻づまり時にみられる感覚野応答の短期的可塑性
J. Neuroscience は,発刊して以来ずっと質の高さを保っている,いい雑誌だと思う。 J. Neurophysiology の方が由緒あって古いのだけど,こちらはなんだか玉石混交になってしまっている。 できれば J. Neurosci に出したいし,そこでリジェクトされたとき,J. Neurophysiol に出すことを考える。 J. Neurosci を狙った論文なら,J. Neurophysiol に出せば大概通る。
さて,東大医学部の森研究室が面白い論文を発表していた。
感覚性入力に対する大脳皮質の応答が,その入力の強弱に応じて柔軟に変化し,左右差が補われるという話らしい。
片鼻詰まると脳も対応=におい知覚領域、すぐに切り替え-東大
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081112-00000029-jij-soci
題材が鼻づまりであることから,我々人間にも身近に感じられて面白い話だ。
片方の鼻が詰まったとき,詰まった方の鼻腔粘膜から脳へと送られるシグナルが急に弱まるかするのだろうけれど,そういう時は反対側からの入力に対する感受性がアップするかして補われるものらしい。
このように脳機能というのはガチガチに固定されたものでなく,いろんな状況に応じて感度を変えて柔軟に対応するし,また常に機能をバックアップするようなはたらきを備えている。 脳がもつ柔軟性のうち,長期的に変化するものは 『記憶』 とか 『学習』 といった役割を担うと考えられているし, 一方,感覚情報の処理や,複雑な運動パタンを作り出すときも神経回路のはたらきは外界環境や身体状況に応じて柔軟に変化している。 脳機能の長期的および短期的な柔軟性,あるいは可塑性こそが,脳を理解する上での重要な鍵となるようだ。
この論文では,おそらく感覚入力に対する応答の大きさをイメージング技術で可視化して測定しているのだろうと思う。 あるいは嗅覚入力に対する皮質ニューロンの感度や応答の変化が具体的にどういうメカニズムで生ずるのか,というところまで考察しているかもしれない。 だとしたら,おそらく抑制性のGABA作動性介在ニューロンのはたらきが関与しているという話か,あるいは神経修飾物質が関与しているのではないだろうかと想像する。
Compensatory Rapid Switching of Binasal Inputs in the Olfactory Cortex
Shu Kikuta, Hideki Kashiwadani, and Kensaku Mori
筆者はまだ若い院生の方らしい。 今週末から始まるニューロサイエンス学会に行かれるのだろうか。
今後の活躍に期待したい。
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